数学者・志村五郎さん亡くなる 「フェルマーの最終定理」解決の糸口 

日本人数学者で、プリンストン大学名誉教授を務めていた、志村五郎さんが、5月3日に亡くなっていたことがわかりました。89歳でした。

志村教授と言えば、数学の難問「フェルマーの最終定理」を解決する際に、その糸口となった「谷山・志村予想」を提唱したことでも有名です。

 

今回は、志村教授が亡くなったことに哀悼の意を表するとともに、「谷山・志村予想」がどのように「フェルマーの最終定理」の証明に役立ったのかを、わかりやすく解説します。

 



「フェルマーの最終定理」とは

フェルマーの最終定理とは、以下のようなものです。(証明されていない主張は、通常「予想」と呼ばれますが、ここでは「最終定理」で統一します。)

普通、数学の難問と呼ばれるものは、問題自体が何を意図しているのかわからなかったり、専門知識がないと理解できないものです。

 

しかし、フェルマーの最終定理は中学生でも理解可能なほど、シンプルです。

n=2 のときは、中学校で学ぶ「ピタゴラスの定理」そのものです。

 

ところが、nが3以上となると、この不等式を満たす自然数の組(x, y, z)が一つも存在しなくなる。これが、フェルマーの最終定理が主張することです。

「算術」の中でフェルマーが予想 「余白が足らない」

この「フェルマーの最終定理」、その名が示す通り、数学者の「フェルマー」が提唱した予想です。

古代の数学書「算術」の中で、フェルマーはこの予想を提唱し、次のように記したことはとても有名です。

私はこの定理の真に驚くべき証明を見つけたが、それを記すのには余白があまりにも狭すぎる。

その時代は17世紀に上ります。

 

今から300年以上前に残された予想は、数々の数学者が証明に挑戦するも、解決には至りませんでした。数学史上、最大の難問と言っても過言ではないのです。

「谷山・志村予想」とは

一方で、日本人数学者の谷山豊と志村五郎が発表した「谷山・志村予想」とは、次のような予想です。

すべての楕円曲線は、モジュラーである

ここで、疑問です。

  ●楕円曲線ってなに?

→そのような関数があるのだ、と思っていただければと思います。

  ●モジュラーってなに?

→そのような関数の分類(対称性)があるのだ、と思っていただければと思います。

 

楕円曲線と呼ばれる関数を特徴づけられる重要な予想として、1955年に発表され、後々この予想が、フェルマーの最終定理を解決に導く糸口となったのです。

「フェルマーの最終定理」と「谷山・志村予想」

さて、ここまで難しい話を続けてきましたが、もう少しの辛抱を。

 

フェルマーの最終定理に出てくる式を変形すると、何やら異様な楕円曲線が生まれると発見したのが、フライという人物でした。1984年のことです。

フェルマーの最終定理の式を変形すると、モジュラーでない楕円曲線が生まれる(フライ曲線)

そして、このことが「フェルマーの最終定理」の証明を突き進める大きな手掛かりとなったのです。

ワイルズ フェルマーの最終定理を解決するまで

上記の内容を簡単に振り返りましょう。

  • 「フェルマーの最終定理」とは何か?
  • 「谷山・志村予想」とはどんな予想?
  • 異様な楕円曲線「フライ曲線」

ここまでの内容に加え、「フェルマーの最終定理」を解決するために、「背理法」という証明方法がキーワードとなります。

「背理法」とは…

証明したい「命題」を一度否定し、証明を進めていくと、途中で大きな矛盾が出てくる。矛盾が出てくる原因は、「命題」を否定したことによる。よって、もとの「命題」は正しい、と結論付ける証明法。

実は、谷山・志村予想が正しいならば、以下のように「フェルマーの最終定理」が正しいことを、「背理法」で証明可能になります:

  1. フェルマーの最終定理が間違っていると仮定する。
  2. フェルマーの最終定理の式を満たす自然数(x, y, z)が存在することになる。
  3. すると、モジュラーでない楕円曲線「フライ曲線」ができる。
  4. 谷山・志村予想の、「すべての楕円曲線はモジュラーである」に矛盾する
  5. よって、元の主張が正しい。つまり、フェルマーの最終定理は正しい。

ということは、「谷山・志村予想」が正しいことを証明できさえすれば、フェルマーの最終定理も正しいことがほぼ証明されることになるのです。

 

イギリスのワイルズによって、この「谷山・志村予想」が解決され、そして「フェルマーの最終定理」も証明されることになりました。1995年のことです。

 

まとめ

今回の記事は難しかったですね。簡単にまとめると、こうです。

  • フェルマーの最終定理は、理解はできるが証明が困難な超難問
  • 谷山・志村予想はフェルマーの最終定理を解決する糸口となる
  • 300年以上ののち、ワイルズが見事証明

フェルマーの最終定理をめぐる物語は、非常に奥深く、そして感動的です。数学にそれほど詳しくなかったとしても、この物語は楽しく読むことができます。以下の書籍は有名な1冊です。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

新品価格
¥853から
(2019/5/5 19:19時点)

 

また、フェルマーの最終定理の周辺の数学に興味がある方に向けた1冊をご紹介。その入り口を、非常にわかりやすく、物語のような形で紹介している以下の書籍も、読みごたえがあります。

数学ガール/フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)

新品価格
¥1,944から
(2019/5/5 19:19時点)

ぜひ一度、読んでみてください。



コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です